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歯科医院に対しては、個人・法人問わず税務調査が行われます。開業や前回の調査から一定期間が経過した場合(基本的に利益が出ていることが前提)や、前年と比して大きく売上が増えたり経営数値の割合が著しく変動があった場合などに調査が入ると言われております。本ブログでは、実際に歯科医院を専門にサポートする税理士の立場から、「税務署がチェックする3つの代表的なポイント」とその「対策」について解説します。
社会保険診療報酬支払基金等に対する請求を経て、医院の銀行口座に入金される売上については、大きな漏れが期待できないことから、税務調査においては、もっぱら「自由診療収入」に対して確認が行われます。
具体的には、
・現金で受領した売上が計上されているか
・長期間にわたる矯正診療について計上時期が適正か
・クレジットカード決済のものについて計上時期が適正か
これらの確認は、アポイント帳や技工物の納品書、技工指示書などから多面的に行われます。
また、患者側の確定申告の医療費控除の情報から、医院側でその計上がなされているか確認が入ることもあると言われております。
税務調査の確認は、現金預金の 入(売上)だけにとどまらず、出(経費)についても行われます。
歯科医院の場合特に、
・交際費の内容に問題がないか
・材料費の未使用分や技工料のうち未セット分が経費として計上されていないか(いわゆる在庫)
・経費計上された備品等が医院に実在するか
などについて行われます。
また、個人事業の場合、院長の妻に対して給与(青色専従者給与)を払っているケースも多いと思われますが、
・支給額が配偶者の保有資格、スキル、経験、労働時間など総合的に勘案して見合っているか
確認される可能性がかなり高いのが実情です。
歯科医院固有の調査項目として、撤去金属冠の収益計上の漏れがあります。これは税務調査において必ずと言ってよいほど確認されます。特に金などの金属の価格が高止まりの昨今、その計上漏れのインパクトも大きいので、今後調査における重要度は高まっているものと思われます。
ちなみに、金属の売却収入を過年度の比で適正かどうかの視点で確認することはもちろんのこと、買取り業者のうち主だった業者複数社へ(反面)調査を行うこともあります。
このように調査項目は歯科固有の論点に絞って行われることが多いのです。次に具体的な対策を見てみたいと思います。
《自費売上》
現金による自費売上の計上漏れは税務調査対応以前に、医院の現金管理の問題でもあります。信頼して受付を任せていたスタッフに、自費売上が日報等から除外され、本来レジに入るハズの現金が抜かれて横領されていたケースを時々聞きます。
・一人に任せっぱなしにせず、必ずダブルチェックの体制を取る
・患者と契約から代金の回収(入金)までのフローを確認し、チェック機能が働くようにする
などの対策が必要だと考えます。
《矯正売上》
次に矯正治療の売上計上は「契約内容」と「治療の進行状況」で決まります
矯正治療の基本料などの売上(収入)の計上タイミングは、歯科医院と患者さんとの契約や治療の実施状況によって次のように整理されます。
① 装置セット時に一括請求する場合
→ 装置を装着した日に、基本料の全額を売上計上します。
② 治療の進行や期間に応じて請求する場合
→ 期間の経過や治療の進行に応じて、その都度売上計上します。
③ それ以外の場合(契約に明記なしなど)
支払日が決まっていれば:その支払日で計上
支払日が決まっていなければ:実際の受領日(または請求日)で計上
ただし、支払日が治療完了後なら:治療完了日で計上されます
高額になりがちな矯正治療は、患者とのトラブル防止のため契約書が重要であるばかりでなく、税務調査の観点でも、契約書や請求タイミングの内容次第で、税務上の取扱いが変わるため、その文言整理と会計処理の整合性が重要になってきます。
《クレジットカード売上》
開業して間もない先生の中には、「入金されたタイミング=売上」とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、会計や税務のルールでは、実際に治療を行った時点で「売上」が発生します。つまり、まだ代金を回収していなくても、提供が終わった時点で売上として計上しなければなりません。
特にクレジットカード決済の場合は注意が必要です。例えば、技工物をセットした日=カード決済日=売上計上日となるように、日報やレセコンの運用ルールを整えておくことが大切です。
《交際費》
歯科医院の税務調査でほぼ必ず指摘される項目の一つが交際費です。特に個人開業の先生の場合、「必要経費にできる範囲」は思っている以上に狭いのが実情です。
判断のポイントは、医院の業務に直接関係しているかどうか。「仕事に関係しているから」という説明だけでは弱く、第三者にも納得してもらえる根拠が必要です。日ごろから「なぜ業務に直結しているのか」を説明できるよう整理しておくことが大切です。
《材料費等》
材料費や技工料のうち、その年(事業年度)に使っていない分は「在庫(棚卸資産)」となり、経費から除外しなければなりません。歯科医院も事業者として年1回(年末や決算時)に棚卸を行う必要があります。
スムーズに棚卸を行うためには、
が重要です。
特に古くなって使えない材料や未セットの技工物を放置していると、棚卸の手間が増えるうえ、在庫計上によって経費から外れ、結果的にムダな税金を払うことになってしまいます。
また、技工所に預けた金属は医院内にないため棚卸から漏れやすく、税務調査で指摘されやすい項目です。日ごろから管理の仕組みを整えておきましょう。
(捨てるのが)モッタイナイは(税金が多くなり)モッタイナイと抑えてください。
《専従者給与》
院長の配偶者などに支払う「専従者給与」も、調査でよく見られる項目です。認められるための3つのポイントは以下の通りです。
1.専ら事業に従事していること
・常勤勤務ならタイムカードで証明可能。
・在宅勤務ならクラウド出退勤や日報で勤務内容を記録することが必要。
2.業務等に見合った適正な金額であること
・資格・経験・勤務時間に応じて判断。
・同じ業務を行うスタッフを採用する際の求人票に載せる金額が基本。
※院長と昼夜休日問わず一心同体で勤務している場合は、その実態も考慮可能だと考えます。
3.届出書どおりに支払っていること
・実際に給与を支払わなければ経費にできない。
・「未払処理」のままでは否認リスク大。
・他のスタッフ同様に給与明細を作成し、振込みで支給するのが確実。
※「未払処理」に関しては、ディーラー紹介の”歯科医院に強い”会計事務所の誤った指導・処理を見たことがあります。
昔ながらの慣習として、撤去した金属冠の代金を振込みではなく現金で受け渡すケースが、いまだに一部の歯科医院に残っているようです。しかし、現金手渡しはスタッフによる不正の温床になりやすいほか、院長立替経費の精算などと混ざってしまい、「うっかり」計上漏れにつながるリスクがあります。
この「うっかり」も税務調査では見逃されません。反面調査によって発覚し、場合によっては「故意の隠ぺい」と認定され、重加算税(重いペナルティ的な税金)が課される恐れもあります。
弊所では、院長先生に余計な管理の負担をかけず、かつリスクを確実に減らすために、撤去金属冠の代金は必ず振込み処理にするようご案内しています。
歯科医院の税務調査で確認される項目は、実際には典型的で限られた内容に集中していることが多いものです。多少の準備は必要ですが事前対応をしておけば、調査時に税務調査官に無用な誤解を受けることなくスムーズに調査が運び、院長は安心して本来取り組むべき診療に専念できます。
繰り返しになりますが、「予防」ができていれば税務調査は怖いものではありません。
税務調査にご不安のある先生は、ぜひお気軽に当事務所までご相談ください。安心できるサポート体制で、先生の医院経営をバックアップいたします。
ご質問やご相談がある方は、こちらからお問い合わせください。私たちが迅速にサポートいたします。