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儲かっているか儲かっていないのかモヤモヤする個人歯科医院の院長へ— どんぶり勘定卒業のコツ—

「うちの医院は儲かっているのか、いないのか、イマイチ分からない。」
「税理士からの報告では黒字らしいが、正直お金が残っていない。」
——そんな院長先生のお話をよく伺います。
当事務所が関わったケースでも、損益計算書上はしっかり利益が出ており、いわゆる“儲かっている医院”に分類されるのに、院長の実感としては「儲かっている気がしない」「手元に残らない」ということがあります。
本稿では、個人経営の歯科医院に絞り、院長のモヤモヤの原因と、事業の儲けを実感できる超シンプルな方法をまとめます。

公私混同が「見えない」を生む理由

 個人の歯科医院では、事業のお金と生活のお金が渾然一体になりがちです。
それは・・・
• 事業口座と生活口座が分かれていない、または分かれていても引出ルールがなく必要都度で頻繁に引き出してしまう。
• その結果、事業と家計の線引きが曖昧になり、「儲かっている/いない」の把握が難しくなってしまう。
• 家計側も家計簿をつけていないケースが多く、事業・家計両面のお金が見えにくくなっている。
と言ったところだと思われます。

一方、法人化した医療法人のケースは、税務署・都道府県への届出や複式簿記の前提から、理事長(院長)といえども、個人利用の目的で(給料以外に)銀行口座からお金を勝手に引き出すことはできません。その結果P/L(損益)に加えて、B/S(資産負債)がその法人の実態を表す結果になります。つまり歯科医院の事業に関する儲けとそれに紐づけられるお金を含む、資産・負債を把握しやすい環境と言えます。

個人事業は会計の運用ルールが法人のそれと比べて緩いため、B/Sが不完全になり、「お金の状況が漠然とする」感覚につながります。

どんぶり勘定卒業の「3」ステップ

では、具体的にどうやったら個人歯科医院の儲けを体感的に把握できるようになるでしょうか?

今回は、アナログではありますが、かなりシンプルなやり方をご案内します。

なお、説明を分かりやすくするため、今回は必要最小限のプロセスに絞って解説します。

ステップ1 銀行口座を事業用と生活用に分ける

事業用口座生活用口座2つを用意し事業用口座には事業用の入出金のみ、生活用口座には生活用の入出金のみに限定する。

※既存の口座があれば、それらを目的に分けるだけで十分です。

生活費が足りない都度、事業口座から現金引出しは避けるよう意識してください。

ステップ2 クレジットカードを事業用と生活用に分ける

事業用クレジットカード口座生活用クレジットカード2つを用意し事業用クレジットカードは事業用の決済のみ、生活用クレジットカードは生活用の決済のみに限定する。

なお、事業クレジットカードの支払いは事業用口座から引き落とし、生活用クレジットカード生活用口座から引落しとします。これにより各銀行口座の入出金の公私混同が回避できるようになります。

ステップ3 院長の必要生活費を「みなし給料」として毎月定額で振替える

従業員に給料を支払うのと同様に院長に対しても給料を支払う。所得税の世界では院長に給料を支払うことはできないので、あくまでも儲けを把握するためのものです。ここでは「みなし給料」と呼ぶことにします。

  • 毎月、スタッフ給与と同じタイミングで、事業用口座 → 生活用口座定額を振込む。
  • みなし給料の設定額目安は、「月々の生活費+学費(の年額÷12カ月)+老後資金の積立額+貯蓄と予備費の合計」とする。
     例)生活費50万+学費10万+老後5万+貯蓄予備費5万円=70万円/月
  • 原則として、臨時出費はみなし給料の貯蓄予備費の枠内でやりくりし事業用口座からの引出しを避けてください。

※どうしても私生活において、想定外の支出が発生した場合には、事業用口座から借ります(←この「借りる→返す」という発想が大切です)。

儲かっているかの“肌感覚”判定と次の一手

銀行口座やクレジットカードを事業と生活とに分け、「みなし給料」を回し始めたら、“肌感覚”で、「事業の調子」「生活費が適切か」把握できるようになりました。
判断の基準は・・・シンプルに、事業用口座と生活用口座の月末残高の推移で行います。ただこれだけです。

事業用口座に関して言えば、毎月残高が概ね増え続けていれば「儲かっている」ということになります。

逆に毎月残高が減り続けていたら生活レベルのミスマッチを疑います。つまり事業の儲け(規模感)に比べて生活レベルが高い可能性があります。この場合、事業収支の見直しとともに家計収支の見直しを行うことにより、各残高推移の改善を図ることになります。

最後に

本稿は個人経営の歯科医院向けのお金の流れを、最小限の手間で「ざっくり」把握するためのやり方についてご説明しました。この実践により、「損益計算書」と「通帳残高」から従来のどんぶり勘定よりは肌感覚的として事業の儲けを捉えやすくなったと思います。

当事務所では個人歯科医院向けの月次報告資料に「みなし給料」設定を予算及び実績に織り込み、院長先生との対話に活用しております。

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